【経営のプチ勘所vol.31:勉強の哲学(東大・京大で一番読まれている本:千葉雅也 著)】

今日から自宅事務所はリフォーム工事入り…朝一番で業者との打合せを済ませると早速、足場組立が始まり煩いため逃げ出すように広島市立図書館へ。折しも各種資格試験シーズンで賑わう自習室の片隅に陣取り(自分も中小企業診断士受験時代に足繁く通い詰めた…)、今夏の新聞記事で気になって購入していた本「勉強の哲学」(千葉雅也:著)を持ち込み受験生に同化して独り“読書の秋”に浸りました。
本書選定の理由は、私が経営者に期待したい「生き残るのは変化に適応する者」という持論(≒ダーウィンの進化論)と、千葉さんの「この勉強論は現時点で生活を変える可能性が気になっている人に向けられている」との考え方がシンクロしていると思ったからです。哲学書なので難解な論調の本ですが、4章建ての各章毎に私なりに咀嚼した為になるポイントを以下紹介します。
第1章 勉強と言語
「勉強」は、むしろ“損をする”こと…かつてのノっていた自分をわざと“破壊する”こと…換言するに、勉強とはわざと“ノリが悪い”人になることである。
「言語」は、環境の洗脳を受け人生を左右し“支配”もするが、以前のノリ①から距離を置いて新しいノリ②へ“解放”する変更可能性も有する重要なコードである。
可能性の空間を開き自由になる条件は、「言語」の“道具的”な使用ウェイトを減らし“玩具的”な使用にウェイトを移すこと…即ち、深い「勉強」により「言語偏重」の人になることである。
第2章 アイロニー、ユーモア、ナンセンス
“玩具的”な言語使用とは、“ツッコミ”₌①アイロニー(根拠を疑う)と“ボケ”₌②ユーモア(見方を変える)で「コードの転覆」を図り別の豊富な可能性を見出すような思考スキルのこと。
①アイロニーと②ユーモアが過剰になると無意味になるので、第3極として“無意味”₌③ナンセンスな極限形態を考慮に入れて…その手前に留まることがポイント!
そうした試行錯誤の折り返し作業を“仮固定”して意味を成り立たせる足場となるのが「享楽的こだわり」=究極のノリであり、そのこだわりは「勉強」を通して変化する可能性を秘めている。ゆえに、「勉強」とは新たな「言葉」に出会い直すことを実現するものである。
第3章 決断ではなく中断
前章までの原理論を踏まえて本章から実践編に入る。
「勉強」を進めるための基礎的なテクニックとして、①現状把握⇒問題化⇒キーワード出し…という経営分析に通じるフレームワーク、②追求⇒連想の合わせ技を駆使して勉強を深め、③大きくて抽象的な間接的分野⇒近くて具体的な直接的分野へと複眼的に捉える思考法を磨く。
こうした過程においてどこかで享楽的に「比較の中断」を図り、ある程度でよしとする「勉強」の“有限化”を図ることが必要である(決して“最後”の「勉強」をやろうとしてはいけない!)。大切なのは「中断」(比較を続けながら比較をストップする=仮固定)であって、別の可能性につながる「勉強」は継続することにある。
自己分析ツール「欲望年表」をつくることで、自分の「勉強」の可能性は広がる…賢くなるために効果的な方法である。
第4章 勉強を有限化する技術
「勉強」の足場とすべきは専門書(○研究書…×一般書)であり、「勉強」の基本は“まとも”な本を読むこと(信頼できる著者による紙の書物)。最初の足場を仮固定できるような“入門書”を読むこと、出来れば複数の入門書⇒教科書⇒基本書の順序で進めること。
「勉強」とは自分で文献を読んで考察するのが本体であって、教師の話は補助的なもの即ち「勉強」の有限化(このくらいでいい)の一助と位置づける。従って「勉強」するにあたって信頼すべき他者とは、知的な相互信頼の空間に属している「勉強」を続けている他者=研究=学問である。
その他勉強を有限化する技術として、①テクスト内在的読書法、②二項対立への注目、③プロ&アマ両輪モードの勉強法、④タイムラインノート術、⑤箇条書きフリーライティング法(横断的に発想する技術)などの方策が有効である。