【vol.5:儲けと品性~障害者雇用~】

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【経営のプチ勘所vol.5 儲けと品性~障害者雇用~】
昨夜のNHKクローズアップ現代で、「全ての人材を戦力に!変わる雇用の現場」という番組が全国放送されました。
内容は、4月から100人以上の中小企業にも障害者の法定雇用率2%が適用され、空前の“売り手”市場になっているというもの。番組自体は世相を反映し、障害者就労への理解も深まる点で素晴らしいもの。特に、広島県で先進事例調査として私も少し関与させて頂いたことのある福山のエフピコ、尾道のカタオカの2社が取り上げられるなど、嬉しい思いを抱え出席した翌今日の広島県障害者自立支援協議会(就労支援部会)の本年度第1回委員会。思わぬ話題を耳にすることになりました。

それは名古屋の同業コンサルタント会社が、福祉を食い物にしているという良からぬ話題。
彼らは民間企業に対して、法律スレスレの抜け道を伝授し形だけの似非障害者支援事業所(専門的にはA型事業所と言います)を開設させ、人件費を大幅に引き下げることで利益を出させるという手法で全国の障害者福祉業界に混乱をもたらしているというもの。
A型事業所とは一般就労は難しいものの、障害程度が比較的軽い人達の通う作業所で、中間就労の場という位置付けにあります。
私が足掛け10年近く生活自立に向けてご支援させて頂いているのは、より重い障害を抱える人達が通うB型事業所が主体なので毛色は違いますが、B型平均給与(工賃と呼びます)が月額1万5千円に対し、A型はより多く工賃を支払わなければならないとはいえ、健常者の給与の比ではなく辛うじて最低賃金レベルとローコスト。
更には社会的弱者救済という意味合いから、福祉分野には人件費や設備投資の補助金等の様々な金銭面の支援策が充実していることも彼ら門外漢にとっては格好の稼ぎネタ。
また、A型には制約も相対的に少ないため、福祉を度外視した邪道の運営もやって出来ない訳ではないというエアーポケット的存在で、そこを目敏く儲けのネタにしようと狙った訳です。

私もこの福祉分野に携わって、障害者の給与(工賃)の低さに唖然としたものですが、だからと言って何の理念もなく…ただ儲けの手法として利用するという理不尽なことを、平気で勧める品性の低さに腹立たしくもあり、恥ずかしくもありました。
それでも同業者の失態…経済分野から出席している立場を代表して、彼らに成り代わって詫びを入れさせて頂きました。福祉分野の委員さん曰く、最近彼らの勧誘に引かれて、岡山から備後地域にかけて“悪しきA型事業所”が増えつつあって、これまで真面目に障害者福祉に取り組んできた既存事業所とのトラブルが問題化しているんだそうなのです。
福祉と経済はある意味二律背反的な要素を持ち合わせており、障害者の幸せという観点からバランスを考えなければならないものなので、決して経済性だけから運営してはいけないものと私は思います。勿論、既存事業所の経営的な脇の甘さも反面で改善されるべきものですが…。

企業とはゴーイング・コンサーン、長く継続してこそ社会的にも価値があるべきです。
「儲け」の字は「信者」と書きます。長く愛されることのない経営に繁栄はありません。
とりわけ…障害者福祉は生半可な考えでは出来ない難しさを抱えています。障害を持つ我が子を残して、年老い…やがて先立たれる親御さんの気持ちを想像出来ないような新参者(福祉に真剣に向き合えない方)が安易に参入してはならない聖域なのです。
企業経営者の皆さんには、こうした理念なき体たらくな誘惑に染まることなく、社会的正義感を失うことなく一本筋の通った在り方を追及して欲しいものです。

【vol.4:逸品~CVSを凌駕 田舎のオバチャン達~】

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【経営のプチ勘所vol.4 逸品~CVSを凌駕する田舎のオバチャン達~】
先日、広島市の要請を受けて、流行りの「街ゼミ」に地元サポーター役として臨席。
その時に同じだなぁ…と思ったのは「一店逸品運動」です。
どちらも有効性が認められている有力な商店街活性化策ですが、ポイントは商店主そのものの拘りや利益率の高い差別的商品について、お客様にその価値を伝え理解して貰うことで、固定ファン層の創出・拡大を狙うもの。

そのロジックは小生が指導時に使っているレジュメ「ABC分析」で、一番売れるA商品群(一般に低利益)ではなく、B商品群(高利益も少なくない)の中から逸品候補を掘り起こして訴求していくのが既存店の手法。つまりBランクの“儲け筋”逸品にスポットを当てて、量販可能なAランクに引き上げることで、稼げる差別的な“売り筋”商品へと育てる訳です。

 さて、写真は戸河内IC出口すぐの交差点付近に立地するセブンイレブンとその奥に隣接する4軒の小さなお店(4連の三角屋根)。
このうちの1軒に「おふくろ弁当」という地元のおばちゃん達が中心で運営しているお店があります。ここはその名の通り、往来する車客を相手に弁当を販売しているんですが、なんと隣のセブンイレブンを完全にのみ込んでいるように見えます。
“売り=逸品”は?天むす、おにぎりをベースに煮物や鶏の山賊焼き、全国表彰のコロッケも人気で、あの田舎にも関わらず平日でも結構売れています。
そこは診断士…セブンイレブンのコーナーをチェックしてみると、あのキラーコンテンツ?おにぎりの数が少ない…つまり隣のおばちゃんの店に降参して仕入れ量を減らしている訳です。コンビニにとって、数も売れて利益も稼げる筈の“逸品”である?おにぎり&弁当類(最大の高利益商品群)の足下を救って頑張っている田舎の個店。
チェーンでもない小さな地元店の活躍の秘訣…全てで勝つ必要はない、どこかで突き抜ける秀逸な商売!たとえ大きくなくてもキラリと光る経営に可能性を感じます。

【vol.3 :「5S」~進化系6S~】

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【経営のプチ勘所vol.3 「5S」~進化系6S~】
合宿研修2日目、昼食後には受講生にとって初めての経営者ヒアリングに連れて行きます。可愛いもので、緊張であまり眠れなかった人もちらほら。社長の皆さん、初々しい銀行員をあまりいたぶらないであげて下さい。
さて、この銀行の「5S」は少しアレンジが効いていて「6S」。普通にいう5Sは最後の2つ、しかも「清掃」の代わりに「作法」です。
地域密着で事業展開される企業にとって参考になります。“ファースト・コール”のフレーズもいいですね。

【vol.2:小売の輪理論~ヤマダ電機の壁~】

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【経営のプチ勘所vol.2:小売の輪理論~ヤマダ電機の壁~】
このところ対外業務の多忙から、後回しだった資格更新や諸整理に追われてます。
その1つが新聞の切り抜き整理。5月29日号の日経MJに「規模よさらばヤマダ出直し」の記事(※写真)がありました。
“安さ”で席巻してきたヤマダ電機が、不振37店の閉鎖に踏み切るに至った経緯が纏められていて興味深いもの。
記事には本タイトルの【小売の輪の理論】とは書いてないが、我々中小企業診断士にとって基礎的な理論にはまった状態。因みに、この理論は、人材の定着等から高コスト体質に陥ったかつての大規模店の足下を掬う形で、低コストな新興勢力がやはり大量販売パワーで“安さ”No.1の地位を奪取するという理論です。
つまり…価格.com等の低価格ネット通販が一般化したり、家電メーカーも海外勢との熾烈な競合を迫られ従来の販売奨励金(リベート)を積む量型の商慣行を見直す=質への転換など、周りの環境が大きく変わっているのに、ヤマダ電機は相変わらずのやり方をしてきて壁にぶつかった訳です。
記事には“サービスが悪いというイメージがついたヤマダの集客力は弱まった”とも。人件費を安くするための悪習…メーカー派遣員の強要やアルバイト店員の接客に不満を感じた顧客は私だけじゃないようです。だからでしょうが、“ヤマダ電機には各エリアで最も強い「地域一番店」が乏しい”とのコメントも。広島のエディオンのほか、大阪都心や秋葉原のヨドバシカメラ、池袋のビックカメラ、関西の上新電機、ヤマダの地元に近い茨城でさえケーズホールディングスに歯がたたないとある。

この記事から学べるのは、経営の基礎理論を理解しておくこと、量より質(多品種少量)の可能性、会社が大きくなるということでの社会的責任の拡大(ES従業員満足を含め)…など沢山あります。
私を含め中小企業診断士は、中小零細の味方!(大企業の味方をする必要はない)なので、耳障りの良い記事であることは間違いないのですが、他方では自己責任を全うすべきこともまた真実!
中小企業の皆さんには、呉々も大きいところがコケてラッキーという他人の褌で相撲をとるんじゃなくて、ちゃんと自助努力を忘れないこと!私たち消費者は良い商品・サービスしか必要とはしない訳ですから、キラリと光る良いお店を目指して頂きたいものです。