【経営のプチ勘所vol.34:障害者就労A型事業所 破綻問題】

今朝のNHK「おはよう日本」7時台ニュースの特集(けさクロ:けさのクローズアップ)で採り上げられたテーマは『福祉事業所相次ぐ閉鎖の波紋』、広島でも11月に福山の「しあわせの庭」が経営破綻し、障害者(利用者)112人が一斉解雇され大きな問題になっています。先週12月22日の広島県障害者自立支援協議会(就労支援部会)でも議事の一つとなったテーマでもあるので、今年最後の投稿はこの問題について“経営の視点からプチ”考えてみます。
1.就労継続支援A型事業所とは
平成18年に制定された障害者自立支援法(平成25年度に障害者総合支援法へ改正・改称)の施行に伴い、それまでの福祉工場や授産施設等の様々な障害者福祉サービス事業が新類型に位置付けられました。大きく分けて民間企業への一般的な就職を目的とする就労移行支援事業と、通常の雇用が困難なため福祉施設の中で働き続ける就労継続支援事業に二分され、後者は更に就労継続支援A型(最低賃金以上の賃金支払条件)と就労継続支援B型(最賃法適用外の工賃支払)に細分されます。
平成27年度の一人当たり月額賃金(全国平均)はA型67,412円(広島県86,780円)、B型15,033円(広島県15,939円)と別に障害年金約65,000円(障害基礎年金2級受給額)と併せた収入はB型では月10万円にも満たず生計維持が厳しい実態にあります。因みに、当然ながら障害程度は就労移行が軽く、就労継続B型は重いという両極の中間にA型があり、賃金は図示グラフの通りB型は徐々に上昇傾向なのに対しA型は次第に低下、これは新制度では規制緩和によりそれまで主体であった社会福祉法人等に加えて民間企業・NPO法人等にも当該事業への参入が可能になったため、比較的取り付きやすそうなA型事業所が謂わば“野放し”感覚で増えていったからと思われます。
2.破綻に至る構造的課題
私は平成19年から県庁の依頼を受けてB型を中心とする低工賃の向上を目的とする支援を行っており、年数回の上記会議にもボランティア的に参加しております。この会議で約2年ほど前から“悪しきA型問題”という言葉が聞かれ始めました。それが今回破綻した事業所のように、障害者の雇用人数に応じて一人当たり最大3年間240万円交付される国の自立支援給付金(特定求職者雇用開発助成金等)を目当てにした安易な新規参入による混乱が各地で起きているという話題でした。障害者の立場からすると、今のB型等所属先事業所よりも高い賃金が貰えるA型事業所が雇ってくれるなら変わりたいのが親心…ここに目を付けた愛知県のコンサルティング会社が大々的に当該助成金をあてにしたA型事業所開設指南を吹聴し、楽に儲けたいという顧客がそれに乗っかった結果がこの事案の背景にあります。そういった内情を掴んだからか、NHKけさクロでは元凶の名古屋市を例示して「事業収入だけでは給料を賄えないA型事業所が約8割」というフリップを用意し、悪徳経営者が自身の古美術品購入に流用した取材画像を放送しました。因みに、新聞記事の方には中国地方でA型が一番多いのは岡山県で160ヶ所、2番目が広島県の87ヶ所と続き、破綻例も7月末に倉敷で5事業所223人の大量解雇に続いての今回の福山問題(平成27年5月開設)となっているように、水面下で岡山から備後地域にかけて悪しきクチコミ等で伝染していったようです。
念のため付言しておきますが…上記不正流用は論外として、障害者事業所には①社会福祉等一般事業会計のほかに、②就労支援事業会計を別建て区分する二本立ての会計制度で事業決算を行うよう制度付けされており、国の補助金は①前者(職員人件費・運営経費等)への充当は許可されているが、②後者の収益事業を伴う就労事業に係る収支不足(今回は直接利用者賃金に充当)は賄うべきではなく、この点を厚生労働省が今年4月の省令改正で厳格化したのが直接の原因と言われています。
3.学ぶべき経営姿勢
上述の通り、そもそもの主旨を勘案すれば事業者は当然正しい運用をするのが“王道”であって、決してずる賢い抜け道・裏道の“邪道”を歩むべきではありません。また、目先の儲け口としてそれを指南した黒幕が同業(中小企業診断士?)と知るにつけ余計に残念で堪らない思いです。
今回の事業所の場合、経営力の無さが指摘されていますが、それ以上に大事な真因は理念不在ということだと思います。以前、私は県庁事業にて県内約50ヶ所の福祉事業所を直接巡回訪問して経営指導をする機会があり、福祉という事業に参画する以上…ただでさえ組織にとって不可欠な「経営理念」が更に一層重要であることを確認しました。福祉事業所にとってお客様は障害者等の社会的弱者であって、万が一破綻等があれば行き場を無くしてしまうような社会的影響力のある事業体なので、自組織が潰れて破産して終わりでは済まない訳です。今一度、経営理念として必要な3要素、①存在意義、②経営姿勢、③行動規範を嘘偽りなく宣言し、利用者の皆さんの人生を永きに亘ってサポートしていく事業責任を全うして頂きたいものです。

【経営のプチ勘所vol.33:2017年ヒット商品番付(決まり手はウチ充)】

12月1日、年末恒例の第34回新語・流行語大賞2017の発表があり、今年の大賞は「インスタ映え」と「忖度」に決まりました。よく耳にし、確かに!…と頷ける言葉でしたね。去年は広島カープの25年振りセ・リーグ制覇の象徴用語「神ってる」が大賞に選ばれ、広島人として…CARPファンとして…誇らしかったことを想い出します。
さて、この時期、私が注目している他のランキングに、日経MJの【ヒット商品番付】があります。こちらは人気沸騰の商品・サービスなどを相撲の番付に擬えて発表するもので、消費の最前線を捉えた…謂わば時代のトレンドがわかる点で、商売人や経営者としてアンテナを敏感に伸ばしておくべきポイントが掴めるので要チェックすべきと思います。
去年の横綱は「ポケモンGO」と「君の名は」…大関は「シン・ゴジラ」と「AI」、今年の横綱は「アマゾン・エフェクト」と「任天堂ゲーム機」…大関は「安室奈美恵」と「AIスピーカー」。注目は2年連続の最高位に入ったAI(人工知能)、そしてタイトルにある通り…消費者の「ウチ(家・内)」の中での生活をより便利に楽しく充(み)たすようなインターネット通販関連の商品・サービスの深まりです。また、1億総活躍や働き方改革といった社会構造変化を踏まえたお悩み対応商品…例えば、小結の「シワ取り化粧品」「睡眠負債商品」など、従来から根強い健康関連ニーズを更に進化させる動きとして今後の注力ポイントの一端が垣間見られたように思われます。
因みに、個人的な興味としては、去年の小結…カープ優勝とオバマ米大統領の訪問で湧いた「広島」、今年の前頭七枚目…イズミ「LECT」が各々、全国番付入りしていることが嬉しい次第でした。