最近、業種的に多くの相談が寄せられている食品関連の事例を今月は採り上げます(8月の中小企業経営革新計画認定企業:広島県経営革新課HP参照)。「株式会社ワールド物産」は広島市安芸区で30年弱の業歴を持つ「国産にんにく」の卸売業者です。“健康”食材というフォローの風も一面ではあるものの、この間中国を中心とした低価格の海外輸入品も増加し、主力の食品スーパー市場における競合は次第に激化。当社もご多聞に漏れず厳しい価格競争に晒され、特に専門特化した食材を取り扱う当社にとって、事業環境悪化の影響はストレートに売上伸び悩みと利益率低下という事態に直結しました。こうした中、約10年前には苦境打開のために“健康”関連の新ビジネスへの多角化に活路を求めたそうですが、やはり「餅は餅屋」という言葉通り決して思惑通りには帰結せず。今回のご支援は、1年半前に先代創業社長が逝去され、急遽後を託されることとなった娘婿である近本新社長とのご縁で、代替わりを契機に新経営戦略の構築に関与させて頂いたものです。
経営革新のテーマは「食後低臭にんにくの新技術導入と拡販」という本業回帰と延長線上の実効性ある新事業。中間マージンの低下著しい既存の定番商品を主体とする「川中(卸)」からの脱却を図り、拘りの高付加価値商品を開発する「川上(製造)」展開、自社でも売り切る「川下(小売)」展開を併せた垂直的マーケット戦略が骨子。技術的な要素が絡むだけに詳細はお知らせできませんが、生産面では高品質のみならず時短・ロス削減等も同時実現する画期的な低臭加工技術の研究導入に成功の可能性を大いに期待するものです。経営革新と言えば何でも“新事業”と捉えリスク覚悟の大勝負のように勘違いする向きがありますが、ビジネスとしての成果をしっかりと見据えた方向性を描くことの大切さを自覚させてくれる好事例と言えるでしょう。