【経営のプチ勘所vol.41:西日本豪雨災害に想う】

広島では7月9日…東日本では6月中に早々と梅雨明け宣言が出された今年は極端な空模様のようです。特に、西日本では6月28日から7月8日にかけて台風7号と梅雨前線の停滞で、例年通りの梅雨末期の大雨がやって来て、特に7月6日(金)夜の豪雨災害は市内のみならず県内広範囲に及び、4年前の市北部の土砂崩れを上回る未曾有の惨禍を巻き起こしました。
私も前日の5日(木)に車で尾道・福山の備後行脚に出掛けた折、午後から激しい雨が降り続き…帰り道既に至るところで路上に雨水がオーバーフローしており、非常にヤバイ雰囲気を感じながら広島に戻ってきました。翌朝は季節柄よく症状が現れる持病の尿管結石&ぎっくり腰の治療に市民病院へ行って来ましたが、この日も終始強い雨が続いて遂に夕方以降…各地で大災害が発生してしまいました。

経営的には自然災害は避けようのない不条理であり、ある意味仕方ないことかも知れない。しかしながら、東日本大震災をきっかけに大企業では非常時の緊急対応計画なるものの策定が進み、事業の機能不全を極力避ける仕組みが採り入れられつつある。そもそも大企業は組織上の拠店が分散していて、停止した機能の代替を図る組織内連携に視野を置くことで自らの裁量で円滑な運営を進めることが可能である。
それに対し、中小企業は立地上の制約や経営資源の脆弱性から自助努力による挽回には限界がある。恐らく今後、国(行政)から再建資金の無利子融資等の各種被災地支援策が打ち出されると思われますが、問題は逆境にめげずに再び復活しようとする経営者の意欲が保持できるか否かである。いくら無利子でも今以上の多額の借金を借り増して長期間の返済を余儀なくされることを思うと、尻込みして廃業を選択する経営者も少なからずあろうかと斟酌する。
瀬戸内の温暖な気候に恵まれ、これまでの常識としては災害に無縁とされてきた広島で中小企業者の支援を業として行う者として、その辺りの実情について、7年前に発生して既に集中復興期間の5年間を経過した東日本大震災の被災地訪問を今夏中に行ってみて肌身に感じてみたいと思う。

【経営のプチ勘所vol.40:破天荒!サウスウェスト航空~NUTSは健在か?~】

ナッツ・リターンと言えば大韓航空副社長(ナッツ姫)の“非常識”極まりない事件でしたが、同じナッツ(NUTS)でも良例として使われるのが米サウスウェスト航空です。こちらは俗語で“変わり者(どうかしている)”という意味で用いられるNUTSでMBAケーススタディに必ず登場する有名企業、航空業界で小さなこの会社が“非常識”な成功を収めた秘訣を著した「破天荒!サウスウェスト航空~驚愕の経営(1997年)」の米字書名が「NUTS! Southwesut Airlines,Crazy Recipe for Business and Personal Success」なのです。この本は小が大を制する痛快な武勇伝を綴りつつ、各章末尾に“小規模企業で成功する秘訣(Success in a NUTSHELL)”が要約されていて、私も拙稿『斧:経営名著』のコーナーに何度か引用記事を紹介させて頂いてきました。
そのサウスウェスト航空が4月17日にエンジン爆発事故を起こして同社初の死亡事故となる乗客女性の上半身が窓から吸い出されたのに続き、その半月後5月3日にも再び窓に亀裂が入り緊急着陸という連続トラブルが報じられ株価下落等の影響も避けられないとの情報も聞かれる事態に直面しているとのこと。LCCの先駆けと言われる同社は、①低運賃、②多頻度運航/定時到着(ピーク・オフピークの2段階運賃制度)、③10分間ターン(他社は50分とされる往復駐機時間を大幅に短縮)で飛行機の稼働率を劇的に高める“非常識”なビジネスモデルを開拓したことは有名ですが、その土台としての「世界で最も安全な航空会社10傑」に格付機関から選定されていた安全神話が揺らぎつつあるのは事実でしょう。
同社は1967年に創設されたが1971年に就航するまで先行大手のイジメ等から草創期の危機に晒されたが、それを乗り切った1973年以降は米航空業界で唯一黒字経営を継続してきた。そのエンジンの一つが業界初の利益分配制度の採用で、株式の10%を従業員が所有し経営者感覚を持って現場で自主的に行動する社員に競争力の源泉があるだけに株価下落の影響は少なくないと思われます。
しかしながら、この事故に関する他の情報ソースには、事故機に搭乗していた女性機長(元米軍戦闘機パイロット)の的確な対応や事故後の会社としての補償対応などの賞賛の声も聴かれるなど、“強靭”で“創造的”、しかも“臨機応変”と言われるサウスウェスト航空の個性が健在な様子が窺われます。これは官僚主義的な大企業に反発する自発能動的な社員が引き寄され、彼らを信頼して任せ決してレイオフせず家族的な固い結びつきを大事にする会社の優れた経営資源があるためでしょう。これは日本企業の良さと悪さを内包したアンチテーゼでもあり、多くの企業に学んで欲しい革新的なDNAです。
さて、今般の連続事故の影響をどう見るか?…数年後恐らく、この逆境が更にこの会社を“成長”させたという評価を得るものと私は確信してます。

【経営のプチ勘所vol.39:SCコト消費…広島の陣】

 GW休み前日の4月27日(金)、広島市西部の石内地区(佐伯区)にイオンの新型SC戦略店舗「THE OUTLETS HIROSHIMA(ジ・アウトレット広島)」がオープンした。去年の4月には同じ西部の商工センター(西区)にイズミのコト消費提案型新店舗「LECT(レクト)」が開業しており、5月6日(日)の日経MJ紙第1面の見出しに“SCコト消費、仁義なき戦い~8割初物vs.地元№1、広島の陣~”として特集記事が組まれるなど、既に飽和状態が囁かれつつある国内32兆円の巨大なショッピングセンター市場の今後を占う動きとして全国的な注目を集めている。
 私も昨日5月8日(火)に「ジ・アウトレット広島」を初訪問、GW期間中は混雑が報じられていたが、この日は平日で私の訪ねた午後には雨が重なったことから駐車場も余裕がありゆっくり視察することが出来ました。小売業最大手の8兆3,900億円の営業収益を誇り国内170ヶ所のSCを展開するイオングループでありながら地域毎では必ずしもトップシェアではない実情の中、中四国・北部九州を地盤に地域性を武器に競合するイズミは売上規模ではイオンの10分の1にも満たない規模でありながら地域№1の位置に君臨する謂わば目の上のたん瘤的競合店。
記事によると、イズミの商業施設やこの地域になかった新たな価値を提供するべく、①物販・飲食店舗では8割近いテナントが広島県初出店、②県内にはない通年利用のスケートリンクやボーリング、VRゲーム等の体験型エンタメ施設が充実するなど、イズミの牙城広島を切り崩すべく従来型のイオンモールとは異なるフォーマットを備えた新たなチャレンジ店舗だとされている。
 同店訪問の印象として、①海外ネットワークを生かした初物等ブランド価値(グローバルソーシング)のみならず、②地域の作家や地元店舗を集めた現地化(地域密着ローカリゼーション)にも配慮され、かつコト消費という共通テーマを持ちながら「LECT」を凌駕する大規模性が備わった中四国最大級の店舗(商圏は車で110分)はインバウンド需要も取り込み市内外から専門性を求める莫大な集客力を十分予見できるものであった。一方、規模では後塵を拝することになったレクトには、ホームセンターCAINZと連結した日常的な買い物の利便性があることから地元客を中心に根強い需要も期待できるとみられる。いずれにせよ中小店にとっては一層厳しい環境に晒されることは避けられないので、これら大型店同士の同質的な競争に巻き込まれないだけの価値磨きで切磋琢磨を図って“キラリと光る個店”として生き残り…勝ち残りを果たすべく頑張って頂きたい。
この両店とも我が家から直線距離で5㎞圏内に立地しているので、今後も折に触れて訪問してイオンvs.イズミの広島対決と商業地図、小売業態の動向について定点観測してみようと思う(※左?写真:ジ・アウトレット広島、右?写真:LECT)。

【経営のプチ勘所vol.38:多品種少量生産・6σ】

 旧知の友人が役員を務める会社からの特命依頼で「ものづくり補助金」申請書の作成支援を行い〆切の4月27日の前々日書類提出を見届けました。彼は私が補助金頼みの経営は邪道という主義から当該補助金の書面審査を引き受ける一方、この手の代書依頼には対応しないことを承知の上で相談して来られたので、無礙には断れない仲なので取り敢えずアドバイスをさせて頂くつもりで遡ること2ヶ月前に面談に応じました。聞けば平成24年以来この補助金に応募すること4回、所謂私の忌み嫌う“補助金コンサル”が関与しても悉く落選してきたとのこと。こうした過去の経緯と企業内容を聴くにつけ、優れた技術を持つ会社でありながら“木を見て森を見ず”という感じでボタンを掛け違えたかのような申請内容のために不採択になっている様子が判りました。あれこれ指導をさせて頂いて数日後、再度強い要請があって本件お引き受けすることになったもの。
 審査ポイントの参考をお示しするならば、①技術面、②事業化面の計8項目における客観性・明確性・優位性・収益性・実現性などが問われることから、補助金云々を超えた全社経営戦略(森)があって初めて設備投資(木)が活かされるといったストーリーを構築すべき点では経営の王道通りと思います。当社の場合、建設機械・産業機械の大手メーカーから部品生産を請け負うだけの技術を有しながら、少品種多量生産タイプの低付加価値な下請的性格が色濃いという課題があり、そうした体質からの脱却を目指した対極の戦略方向性を訴求することになります。本稿では以下に、1.多品種少量生産、2.6σ(シックスシグマ)を概説しますが、これは当社が更に精密度を磨いて航空機・高速鉄道・発電プラント等の高付加価値かつ成長新分野に軸足を移していくための基礎理論ですが、当社を知れば知るほど楽しくなる遣り甲斐のある仕事に関わらせて頂いた満足感に浸ってGW休みを満喫できそうです。

1.多品種少量生産…小ロット生産を実現するには、段取時間の短縮、多能工化、生販売一体化などの基本的条件を整備しなけらばならない。そのためには、①管理システム改善、②物的システム改善の両輪についてメスを入れる必要があり、当社の場合は長年にわたって外注内製化に取り組み、中流(加工)工程では概ね自社一貫生産を達成。今般の補助事業の一方の目的である上流・下流工程の取り込みによりQCDレベルの大幅向上が期待されます。
①管理システム:生産計画、材量所要量計画、手順計画、発注、在庫把握、納期管理、日程計画・差立て、進度管理、工数管理、オペレーションコントロール・パフォーマンスコントロール等の一連のシステム化。
②物的システム:レイアウト計画、作業(加工)方法・段取作業・運搬・補完方法等の改善。

2.6σ(シックスシグマ)…シグマ(σ)は標準偏差と呼ばれ、6σとは100万分の3~4回というミス・エラーの発生確率を実現するというハイレベルな経営手法。補助事業の他方の目的は“キサゲ”と呼ばれる職人技で作り込んだ超高精度な加工機を導入することで、航空機・高速鉄道・発電プラント等の精密度が要求される事業分野への対応を目指すというもの。既存事業部門で大手メーカーを相手に磨き込んだ技術力を礎に展開可能なレベルにあり、既に各分野に関連する大手との商談が進んでおり実現可能性も高いと判断されます。

【経営のプチ勘所vol.37:従業員満足(ES)】

3月15日(木)に広島商工会議所小売商業部会(小生所属)の二本立てセミナー「企業成長の源泉“従業員満足(ES)”について考える」を聴講してきました。

1.前半:広島修道大学商学部松尾准教授の基調講演「従業員満足とインターナル(社内)・マーケティング」
 ①サービス・プロフィット・チェーン、②インターナル・マーケティングの両理論に基づいて、サービス業の人手不足と生産性向上、働き方改革をテーマに現状と課題について論究されました。スカンジナビア航空の「真実の瞬間」をはじめ、リッツカールトンホテル、スターバックスコーヒー、サウスウェスト航空など有名ネタを基にどこまで斬り込まれるか!…と興味津々で聴き進みましたが、人に投資⇒エンパワメント⇒従業員満足で定着率アップを図り離職を防ぐという、私にとっては取り立てて目新しい内容ではなく若干一般論的に終わったのは残念でしたが、体系的な知識の復習という面では役立つものでした。
但し、最後に触れられた「人員確保・増大の落とし穴」で、①働かない社員・働く意思のない社員の増加、②組織は腐敗する(=腐ったリンゴ問題)と、《能力》×《働く意志》の高低4つのマトリックス整理は面白い内容で、理想的従業員は大手へ行って中小企業は採用しにくいため、ヤル気は有るが能力の低い従業員をちゃんと研修で伸ばす必要がある点は頷けるものでした。
※下図(左):当事務所作成のBSC・SPC講義レジュメよりES・CSの関係性を概説。

2.後半:㈱フレスタ人事総務部の事例発表「『働きやすさ』と『働きがい』を実現する組織風土創り」
 ご当地の有力食品スーパーであるフレスタは一消費者(実店舗・宅配)として頻繁に利用させて頂いていますが、この取り組み事例紹介を聴いて企業としての戦略性の高さに正直驚かされました。
 先ず、ヘルシストスーパー実現のための“5つの健康”、①地域(継続的CSR・ブランディング活動)、②商品(健康Bimiとライフスタイル型商品)、③サービス(利便性の向上・オムニチャンネル)、④従業員(働きやすさ・モチベーション)、⑤健全な経営(KPI=ROI・ROA)という基本戦略を構築。
次に、④従業員に対する“働きやすさ”を実現すべく現状課題を組織活力診断によって的確に分析して公平感と柔軟性のある人事諸制度を構築・運用、“働きがい”の創出のために個々の従業員の動機にきめ細かくフォローして有給休暇の取得促進や社内表彰、面談等を通して満足度アップを図るなど、「風土」「評価」「研修体系」など教学する組織を目指した諸々の示唆に富んだ取り組みに感心しました。

【経営のプチ勘所vol.36:再生支援ネットワーク】

 2月26日(月)に日本政策金融公庫広島支店が全国に先駆けて組織化し注目を集めている「第2回再生支援ネットワーク会議」が開催されました。
 再生支援ネットワークとは企業の“再生支援を通じて地域への貢献度を高める”をテーマとして平成29年8月に設立され、①金融機関と専門家との連携強化、②公庫との連携強化、③経営改善センターの積極利用の3つの目的を共有する広島地域の官民横断的な連携組織です(第1回Kickoff会議H29年8月25日開催)。
 具体的な支援対象・内容は、早期再生が可能なリスケなどの状況にある企業に対して金融支援を実施するというもので、通常は債務超過等の業績不振に陥っている場合は前向きな融資増額対応は基本的に無理なところ、本スキームでは確りした再生事業計画の裏付けのもと“真水”分を含めた資金支援の道が開かれます。
 今回の第2回会議では設立後半年を経過しての以下3つの融資事例が紹介され、当事務所「経営考房」が関与させて頂いた融資事例(事例2)の発表依頼に応じご報告させて頂きました。金融格付けが低位にある当該企業に対する融資として3つの事例の中では最も大きな案件を担当しましたが、①融資金利が▲0.5~1%低下&②融資増額という結果にお客様から望外の喜びのお言葉を頂戴したことが私にとって何よりも嬉しいことでした。
《融資事例1》コンサル(ビズサポート)⇒金融機関(地銀)へ持込:売上2.6百万円(債務超過▲5.7百万円)の零細経営コンサルタント融資…真水0.8百万円を含む3百万円
《融資事例2》金融機関(広島県信用組合)⇒コンサル(経営考房)へ持込:売上56百万円(債務超過▲6~50百万円)の中堅スポーツジム融資…真水7百万円を含む15百万円
《融資事例3》金融機関(広島信用金庫)⇒公庫へ持込:売上31百万円(債務超過▲21百万円)の吹付塗装業向け融資…真水1.4百万円を含む2.5百万円

【経営のプチ勘所vol.35:IE七つ道具】

 わが国における経営学は、戦前において「骨はドイツ、肉はアメリカ」と言われるようなものとして形成・発展せしめられ、戦後においてはアメリカ経営学を主流として現在に及んでいる。これは大学2年次から所属したゼミナール恩師の三戸 公先生の基本書「経営学」の序章からの引用です。経営経済学と訳されるドイツ流の学問は“価値理論”に拠るのに対し、アメリカ流は飽くまで“組織管理論”として生きた企業(…のみならず組織)を対象として現場で役立つ学問として発展してきたことによります。
 今年第1回目のテーマとして採り上げた「IE」はテイラー・システムに始まる科学的管理法を源流とするもので、1970年代から80年代にかけてのわが国高度成長のベースは戦後逸早くこうしたアメリカ式IEを学び、それをQC活動等(TQC・TQM・TPM・TPS:トヨタ生産方式)によりカイゼン進化させてきた賜物とされます。IE手法は製造業で培われたメソッドですが、今日では製造門のみならず幅広く活用され、労働生産性が低いとされるサービス業等でも応用されて付加価値向上に役立つ事例も数多く報じられるなど注目を集めています。本稿では“基本中の基本”である七つ道具をご紹介します。

1.工程分析…最も基本的な現状分析手法のひとつで、工程を①加工(切断・穴あけ・研削・組立など)、②運搬、③検査、④停滞(貯蔵)の4つに区分して工程順序に従って表示する。そして問題工程の時間・距離・方法を改善することで、生産期間(L・T)の短縮およびコスト削減を狙いとする。
2.稼働分析…①人および②設備について、動いている状態を連続または瞬間観測法で観測し、その活動の時間的構成比率を統計的に推測し標準時間設定などに活用する。作業内容を稼働(価値ある作業)と非稼働(価値のない作業)に分けて全体の問題点を容易に把握することで改善重点を見つける。
3.動作研究…ムダな動作をなくし効率的な疲労の少ない経済的・人道的動作の組み合わせを確立するために、作業の動作を要素作業(加工・運搬)から最小単位の動作作業(探す・つかむ等サーブリッグ)の段階まで細かく分解し、定量的に分析することで不要作業の洗い出しや改善対象・順序が視覚化できる。
4.時間研究…作業時間の経過をストップウォッチ・ビデオなどを活用し正確に測定することで、問題点の把握とその改善による標準時間への活用などを行っていく考え方と手法。前述の1.~3.の「方法研究(Method Engineerring)」と共にIE改善技術を構成する「作業測定(Work Measurement)」の主な手法である。
5.物流分析(マテリアル・ハンドリング)…会社外での輸送から、会社内でのマテリアル・ハンドリング(荷降ろし・積替え・集荷・移動・積込み・出荷作業などの一貫した品物の取扱い)の時間・距離などを定量的に把握することで、改善を定量的・効果的に推進する手法。
6.プラント・レイアウト…レイアウト(工場内設備などの配置)の巧拙は、工場建設~改修~廃棄に至る工場生涯に亘って経済的に大きな影響を与える。工場の建屋、設備配置、材料置場などの最適配置により、最も効果的に製品を生産するためにその実態を月々の製品の流れの中で的確に把握していく手法。
7.事務(工程)改善…長年にわたる現場改善と生産合理化により直接付加価値を生み出す製造現場での労働生産性は著しく向上してきたが、付加価値を生まない事務・間接部門の改善は進んでいないため事務改善でのムダを省き事務部門比率を2~3割にスリム化を図っていく手法。

【経営のプチ勘所vol.34:障害者就労A型事業所 破綻問題】

今朝のNHK「おはよう日本」7時台ニュースの特集(けさクロ:けさのクローズアップ)で採り上げられたテーマは『福祉事業所相次ぐ閉鎖の波紋』、広島でも11月に福山の「しあわせの庭」が経営破綻し、障害者(利用者)112人が一斉解雇され大きな問題になっています。先週12月22日の広島県障害者自立支援協議会(就労支援部会)でも議事の一つとなったテーマでもあるので、今年最後の投稿はこの問題について“経営の視点からプチ”考えてみます。
1.就労継続支援A型事業所とは
平成18年に制定された障害者自立支援法(平成25年度に障害者総合支援法へ改正・改称)の施行に伴い、それまでの福祉工場や授産施設等の様々な障害者福祉サービス事業が新類型に位置付けられました。大きく分けて民間企業への一般的な就職を目的とする就労移行支援事業と、通常の雇用が困難なため福祉施設の中で働き続ける就労継続支援事業に二分され、後者は更に就労継続支援A型(最低賃金以上の賃金支払条件)と就労継続支援B型(最賃法適用外の工賃支払)に細分されます。
平成27年度の一人当たり月額賃金(全国平均)はA型67,412円(広島県86,780円)、B型15,033円(広島県15,939円)と別に障害年金約65,000円(障害基礎年金2級受給額)と併せた収入はB型では月10万円にも満たず生計維持が厳しい実態にあります。因みに、当然ながら障害程度は就労移行が軽く、就労継続B型は重いという両極の中間にA型があり、賃金は図示グラフの通りB型は徐々に上昇傾向なのに対しA型は次第に低下、これは新制度では規制緩和によりそれまで主体であった社会福祉法人等に加えて民間企業・NPO法人等にも当該事業への参入が可能になったため、比較的取り付きやすそうなA型事業所が謂わば“野放し”感覚で増えていったからと思われます。
2.破綻に至る構造的課題
私は平成19年から県庁の依頼を受けてB型を中心とする低工賃の向上を目的とする支援を行っており、年数回の上記会議にもボランティア的に参加しております。この会議で約2年ほど前から“悪しきA型問題”という言葉が聞かれ始めました。それが今回破綻した事業所のように、障害者の雇用人数に応じて一人当たり最大3年間240万円交付される国の自立支援給付金(特定求職者雇用開発助成金等)を目当てにした安易な新規参入による混乱が各地で起きているという話題でした。障害者の立場からすると、今のB型等所属先事業所よりも高い賃金が貰えるA型事業所が雇ってくれるなら変わりたいのが親心…ここに目を付けた愛知県のコンサルティング会社が大々的に当該助成金をあてにしたA型事業所開設指南を吹聴し、楽に儲けたいという顧客がそれに乗っかった結果がこの事案の背景にあります。そういった内情を掴んだからか、NHKけさクロでは元凶の名古屋市を例示して「事業収入だけでは給料を賄えないA型事業所が約8割」というフリップを用意し、悪徳経営者が自身の古美術品購入に流用した取材画像を放送しました。因みに、新聞記事の方には中国地方でA型が一番多いのは岡山県で160ヶ所、2番目が広島県の87ヶ所と続き、破綻例も7月末に倉敷で5事業所223人の大量解雇に続いての今回の福山問題(平成27年5月開設)となっているように、水面下で岡山から備後地域にかけて悪しきクチコミ等で伝染していったようです。
念のため付言しておきますが…上記不正流用は論外として、障害者事業所には①社会福祉等一般事業会計のほかに、②就労支援事業会計を別建て区分する二本立ての会計制度で事業決算を行うよう制度付けされており、国の補助金は①前者(職員人件費・運営経費等)への充当は許可されているが、②後者の収益事業を伴う就労事業に係る収支不足(今回は直接利用者賃金に充当)は賄うべきではなく、この点を厚生労働省が今年4月の省令改正で厳格化したのが直接の原因と言われています。
3.学ぶべき経営姿勢
上述の通り、そもそもの主旨を勘案すれば事業者は当然正しい運用をするのが“王道”であって、決してずる賢い抜け道・裏道の“邪道”を歩むべきではありません。また、目先の儲け口としてそれを指南した黒幕が同業(中小企業診断士?)と知るにつけ余計に残念で堪らない思いです。
今回の事業所の場合、経営力の無さが指摘されていますが、それ以上に大事な真因は理念不在ということだと思います。以前、私は県庁事業にて県内約50ヶ所の福祉事業所を直接巡回訪問して経営指導をする機会があり、福祉という事業に参画する以上…ただでさえ組織にとって不可欠な「経営理念」が更に一層重要であることを確認しました。福祉事業所にとってお客様は障害者等の社会的弱者であって、万が一破綻等があれば行き場を無くしてしまうような社会的影響力のある事業体なので、自組織が潰れて破産して終わりでは済まない訳です。今一度、経営理念として必要な3要素、①存在意義、②経営姿勢、③行動規範を嘘偽りなく宣言し、利用者の皆さんの人生を永きに亘ってサポートしていく事業責任を全うして頂きたいものです。

【経営のプチ勘所vol.33:2017年ヒット商品番付(決まり手はウチ充)】

12月1日、年末恒例の第34回新語・流行語大賞2017の発表があり、今年の大賞は「インスタ映え」と「忖度」に決まりました。よく耳にし、確かに!…と頷ける言葉でしたね。去年は広島カープの25年振りセ・リーグ制覇の象徴用語「神ってる」が大賞に選ばれ、広島人として…CARPファンとして…誇らしかったことを想い出します。
さて、この時期、私が注目している他のランキングに、日経MJの【ヒット商品番付】があります。こちらは人気沸騰の商品・サービスなどを相撲の番付に擬えて発表するもので、消費の最前線を捉えた…謂わば時代のトレンドがわかる点で、商売人や経営者としてアンテナを敏感に伸ばしておくべきポイントが掴めるので要チェックすべきと思います。
去年の横綱は「ポケモンGO」と「君の名は」…大関は「シン・ゴジラ」と「AI」、今年の横綱は「アマゾン・エフェクト」と「任天堂ゲーム機」…大関は「安室奈美恵」と「AIスピーカー」。注目は2年連続の最高位に入ったAI(人工知能)、そしてタイトルにある通り…消費者の「ウチ(家・内)」の中での生活をより便利に楽しく充(み)たすようなインターネット通販関連の商品・サービスの深まりです。また、1億総活躍や働き方改革といった社会構造変化を踏まえたお悩み対応商品…例えば、小結の「シワ取り化粧品」「睡眠負債商品」など、従来から根強い健康関連ニーズを更に進化させる動きとして今後の注力ポイントの一端が垣間見られたように思われます。
因みに、個人的な興味としては、去年の小結…カープ優勝とオバマ米大統領の訪問で湧いた「広島」、今年の前頭七枚目…イズミ「LECT」が各々、全国番付入りしていることが嬉しい次第でした。

【経営のプチ勘所vol.32:マーケティング4.0の到来】

世界的に広く知られた近代マーケティングの父…フィリップ・コトラー「マーケティング4.0~スマートフォン時代の究極法則~」の第1刷発行日は2017年8月30日。昨秋、広島に来られた際にも、本稿HP【vol.14:コトラー来広~マーケティング4P+2P~】で紹介させて頂いて注目コトラーの最新刊だけに私も早々に購入していたところ…去る11月1日、愛読紙である日経MJが年1回発表する「第35回サービス業総合調査」の今年のタイトルとして早速採用、コトラー氏が提唱する概念が現実化してきたと報じられました。
今月の経営のプチ勘所では、当該記事の裏付けとなるマーケティング概念の1.0~4.0に至る構造的変遷を簡単に整理するととものに、最新の4.0概念に基づく収益拡大手法について解説してみたいと思います。
1.マーケティング1.0:製品中心~作り手による生産・販売志向~
1908年にフォード社が世界初の大衆車「T型フォード」を世に出して以来、工業化時代のマス市場(需要>供給)における関心はより多くの購買者に買ってもらうことであり、規格化と規模拡大で生産コストを低減する《製品管理》を軸にマーケティングという概念は1950年代の米国で市民権を得たとされます(注)。謂わば、1社独占の“作れば売れる”時代の生産志向と、その後競合他社も出現して“(自社製品を)いかに沢山売るか”という販売志向を通し、「機能」的価値を訴求する“1対多数の取引”原理のもとに展開していました。そのためマーケティング1.0の標準モデルは、マーケティング・ミックスとして知られる「4P」(Product・Price・Place・Promotion)を中心とした戦術的性格のものでした。
(注)コトラー最初の大著「マーケティング・マネジメント」では、①その源流はピーター・ドラッカー曰く1650年頃江戸時代に三井家が最初に開いた百貨店にあること、②マーケティングという言葉が初めて使われたのは1905年ペンシルベニア大学の講座とされています。
2.マーケティング2.0:顧客中心~買い手である消費者志向~
1970年代、石油ショック等の不確実な時代に入り需給バランスの逆転(需要<供給)で「4P」だけでやっていけなくなると、マーケティングの重要性は一層高まり「STP」(Segmentation・Targeting・Positioning)を付加した戦略的次元へと進化しました。「機能」的な物質ニーズに加えて「感情」的価値(マインド・ハート)を追求する洗練された特定市場の消費者を、情報化社会の進展による《顧客管理》技術で差別化して“1対1の関係”を築くことで効果的な需要創出を図ろうと展開しました。
3.マーケティング3.0:人間中心~社会的責任を両立する価値志向~
グローバル化のティッピング・ポイント(転換点)とされる1989年…パソコンがビジネスの主流に入り込み、90年代初めにインターネットが誕生して以降…価値主導の段階に入ったとされています。現代我々は選択する製品・サービスに「機能」的・「感情」的充足だけでなく「精神」的価値も求めるようになってきました。スティーブン・コヴィー博士の言う全人的存在、即ち「肉体」「マインド」「ハート」「精神」の人間の基本的構成要素の全てに訴求して“魂の暗号を解く”努力が必要になってきた訳です。マーケティングはこれまでの「縦の関係」に加え、「横の関係」に支えられたクチコミ・SNSを含めた他人の意見を信頼する“多数対多数の協働”時代へ移り変わりつつあります。このため企業や商品の選考基準に環境や社会貢献等を含めた《ブランド管理》の要素が加わりました。マーケティング3.0の将来モデルは「3i」(Bband-identity・Brand-integrity・Brand-image)というコンセプトから成る完全な三角形を形成することにあるとしている。
4.マーケティング4.0:~3.0の自然な発展形としての自己実現志向~
コトラーの「マーケティング3.0~ソーシャル・メディア時代の新法則~」が出版されたのは2010年9月、最新刊マーケティング4.0はデジタル経済におけるカスタマー・ジャーニー(注)の質の変化に適応する必要があるため…3.0の自然な発展形として示したもの。本稿では第3部「デジタル経済におけるマーケティングの戦術的応用」から売上増大のためのオムニチャネル・マーケティングの実行策として、オン・オフ様々なチャネルを統合してシームレスで一貫性のある顧客経験を生み出す手法が紹介されています。
伝統的マーケティングでは「認知」~「行動」までのセールス・サイクルを扱うのに対し、デジタル・マーケティングでは「推奨」に進ませることを重視する。マーケティング4.0とは、企業と顧客のオンライン交流とオフライン交流を一体化させるマーケティング・アプローチであり、その手法として、①モバイル・アプリを使ってデジタルな顧客体験を高める、②ソーシャルCRMアプリを使って顧客をカンバセーションに参加させソリューションを提供する、③ゲーミフィケーションを使って望ましい顧客行動を促すことができるとしています。CS顧客満足理論の進化版としても注目すべきでしょう。
(注)製品やサービスを知った顧客が購入・推奨に至るまでの「5A」の道筋。認知→(Aware)→訴求(Appeal)→調査(Ask)→行動(Act)→推奨(Advocate)。