【経営のプチ勘所vol.37:従業員満足(ES)】

3月15日(木)に広島商工会議所小売商業部会(小生所属)の二本立てセミナー「企業成長の源泉“従業員満足(ES)”について考える」を聴講してきました。

1.前半:広島修道大学商学部松尾准教授の基調講演「従業員満足とインターナル(社内)・マーケティング」
 ①サービス・プロフィット・チェーン、②インターナル・マーケティングの両理論に基づいて、サービス業の人手不足と生産性向上、働き方改革をテーマに現状と課題について論究されました。スカンジナビア航空の「真実の瞬間」をはじめ、リッツカールトンホテル、スターバックスコーヒー、サウスウェスト航空など有名ネタを基にどこまで斬り込まれるか!…と興味津々で聴き進みましたが、人に投資⇒エンパワメント⇒従業員満足で定着率アップを図り離職を防ぐという、私にとっては取り立てて目新しい内容ではなく若干一般論的に終わったのは残念でしたが、体系的な知識の復習という面では役立つものでした。
但し、最後に触れられた「人員確保・増大の落とし穴」で、①働かない社員・働く意思のない社員の増加、②組織は腐敗する(=腐ったリンゴ問題)と、《能力》×《働く意志》の高低4つのマトリックス整理は面白い内容で、理想的従業員は大手へ行って中小企業は採用しにくいため、ヤル気は有るが能力の低い従業員をちゃんと研修で伸ばす必要がある点は頷けるものでした。
※下図(左):当事務所作成のBSC・SPC講義レジュメよりES・CSの関係性を概説。

2.後半:㈱フレスタ人事総務部の事例発表「『働きやすさ』と『働きがい』を実現する組織風土創り」
 ご当地の有力食品スーパーであるフレスタは一消費者(実店舗・宅配)として頻繁に利用させて頂いていますが、この取り組み事例紹介を聴いて企業としての戦略性の高さに正直驚かされました。
 先ず、ヘルシストスーパー実現のための“5つの健康”、①地域(継続的CSR・ブランディング活動)、②商品(健康Bimiとライフスタイル型商品)、③サービス(利便性の向上・オムニチャンネル)、④従業員(働きやすさ・モチベーション)、⑤健全な経営(KPI=ROI・ROA)という基本戦略を構築。
次に、④従業員に対する“働きやすさ”を実現すべく現状課題を組織活力診断によって的確に分析して公平感と柔軟性のある人事諸制度を構築・運用、“働きがい”の創出のために個々の従業員の動機にきめ細かくフォローして有給休暇の取得促進や社内表彰、面談等を通して満足度アップを図るなど、「風土」「評価」「研修体系」など教学する組織を目指した諸々の示唆に富んだ取り組みに感心しました。

【経営のプチ勘所vol.36:再生支援ネットワーク】

 2月26日(月)に日本政策金融公庫広島支店が全国に先駆けて組織化し注目を集めている「第2回再生支援ネットワーク会議」が開催されました。
 再生支援ネットワークとは企業の“再生支援を通じて地域への貢献度を高める”をテーマとして平成29年8月に設立され、①金融機関と専門家との連携強化、②公庫との連携強化、③経営改善センターの積極利用の3つの目的を共有する広島地域の官民横断的な連携組織です(第1回Kickoff会議H29年8月25日開催)。
 具体的な支援対象・内容は、早期再生が可能なリスケなどの状況にある企業に対して金融支援を実施するというもので、通常は債務超過等の業績不振に陥っている場合は前向きな融資増額対応は基本的に無理なところ、本スキームでは確りした再生事業計画の裏付けのもと“真水”分を含めた資金支援の道が開かれます。
 今回の第2回会議では設立後半年を経過しての以下3つの融資事例が紹介され、当事務所「経営考房」が関与させて頂いた融資事例(事例2)の発表依頼に応じご報告させて頂きました。金融格付けが低位にある当該企業に対する融資として3つの事例の中では最も大きな案件を担当しましたが、①融資金利が▲0.5~1%低下&②融資増額という結果にお客様から望外の喜びのお言葉を頂戴したことが私にとって何よりも嬉しいことでした。
《融資事例1》コンサル(ビズサポート)⇒金融機関(地銀)へ持込:売上2.6百万円(債務超過▲5.7百万円)の零細経営コンサルタント融資…真水0.8百万円を含む3百万円
《融資事例2》金融機関(広島県信用組合)⇒コンサル(経営考房)へ持込:売上56百万円(債務超過▲6~50百万円)の中堅スポーツジム融資…真水7百万円を含む15百万円
《融資事例3》金融機関(広島信用金庫)⇒公庫へ持込:売上31百万円(債務超過▲21百万円)の吹付塗装業向け融資…真水1.4百万円を含む2.5百万円

【経営のプチ勘所vol.35:IE七つ道具】

 わが国における経営学は、戦前において「骨はドイツ、肉はアメリカ」と言われるようなものとして形成・発展せしめられ、戦後においてはアメリカ経営学を主流として現在に及んでいる。これは大学2年次から所属したゼミナール恩師の三戸 公先生の基本書「経営学」の序章からの引用です。経営経済学と訳されるドイツ流の学問は“価値理論”に拠るのに対し、アメリカ流は飽くまで“組織管理論”として生きた企業(…のみならず組織)を対象として現場で役立つ学問として発展してきたことによります。
 今年第1回目のテーマとして採り上げた「IE」はテイラー・システムに始まる科学的管理法を源流とするもので、1970年代から80年代にかけてのわが国高度成長のベースは戦後逸早くこうしたアメリカ式IEを学び、それをQC活動等(TQC・TQM・TPM・TPS:トヨタ生産方式)によりカイゼン進化させてきた賜物とされます。IE手法は製造業で培われたメソッドですが、今日では製造門のみならず幅広く活用され、労働生産性が低いとされるサービス業等でも応用されて付加価値向上に役立つ事例も数多く報じられるなど注目を集めています。本稿では“基本中の基本”である七つ道具をご紹介します。

1.工程分析…最も基本的な現状分析手法のひとつで、工程を①加工(切断・穴あけ・研削・組立など)、②運搬、③検査、④停滞(貯蔵)の4つに区分して工程順序に従って表示する。そして問題工程の時間・距離・方法を改善することで、生産期間(L・T)の短縮およびコスト削減を狙いとする。
2.稼働分析…①人および②設備について、動いている状態を連続または瞬間観測法で観測し、その活動の時間的構成比率を統計的に推測し標準時間設定などに活用する。作業内容を稼働(価値ある作業)と非稼働(価値のない作業)に分けて全体の問題点を容易に把握することで改善重点を見つける。
3.動作研究…ムダな動作をなくし効率的な疲労の少ない経済的・人道的動作の組み合わせを確立するために、作業の動作を要素作業(加工・運搬)から最小単位の動作作業(探す・つかむ等サーブリッグ)の段階まで細かく分解し、定量的に分析することで不要作業の洗い出しや改善対象・順序が視覚化できる。
4.時間研究…作業時間の経過をストップウォッチ・ビデオなどを活用し正確に測定することで、問題点の把握とその改善による標準時間への活用などを行っていく考え方と手法。前述の1.~3.の「方法研究(Method Engineerring)」と共にIE改善技術を構成する「作業測定(Work Measurement)」の主な手法である。
5.物流分析(マテリアル・ハンドリング)…会社外での輸送から、会社内でのマテリアル・ハンドリング(荷降ろし・積替え・集荷・移動・積込み・出荷作業などの一貫した品物の取扱い)の時間・距離などを定量的に把握することで、改善を定量的・効果的に推進する手法。
6.プラント・レイアウト…レイアウト(工場内設備などの配置)の巧拙は、工場建設~改修~廃棄に至る工場生涯に亘って経済的に大きな影響を与える。工場の建屋、設備配置、材料置場などの最適配置により、最も効果的に製品を生産するためにその実態を月々の製品の流れの中で的確に把握していく手法。
7.事務(工程)改善…長年にわたる現場改善と生産合理化により直接付加価値を生み出す製造現場での労働生産性は著しく向上してきたが、付加価値を生まない事務・間接部門の改善は進んでいないため事務改善でのムダを省き事務部門比率を2~3割にスリム化を図っていく手法。