2018年秋以降、代表:山根敏宏の度重なる右手足骨折とその後の手術により、【経営の勘所】を暫くお休みさせて頂いておりました。去る今年2月に抜釘手術を終え、漸く体調も回復途上にあることから、約2年振りに記事投稿を復活したいと思います。今後とも引き続き宜しくお願い申し上げます。
【Prologue:有名なフレーズから】
2021年のNHK大河ドラマ「晴天を衝く」の放送が始まり、主人公の渋沢栄一への関心の高まりとともに著書「論語と算盤」をテーマとした勉強会も盛んに開催されています。
明治日本資本主義の父とされる栄一激動の人生はドラマに譲るとして、世界的経営学の神様P.F.ドラッカーが研究対象とした渋沢翁の哲学の背景にある孔子の言行録「論語」とはどんなものなのか?…今から2,500年前の春秋時代中国に生まれた儒教思想は、その後わが国を含む東アジア圏に広く伝播、栄一が生まれた江戸時代には藩校・寺小屋教育の基礎として日本人にとっての当たり前則ちアイデンティティの一つの源流「論語」哲学について、毎週末に小生の独断(と偏見?)のもとに幾つかのテーマ毎にご紹介しようと思います。
(注)本稿の構成:■論語原文、‥(訳)口語訳(※訳文は守屋敦氏解説より引用)
⇒小生感想等の追加コメントの順で概説します。
先ずは皆んなが知っている「論語」の有名なフレーズから。
■温故知新:子曰く、故ふるきを温たずねて新しきを知れば、以って師たるべし。《為政篇》
‥(訳)過去の歴史を勉強することによって、現代に対する洞察を深めていく。こういう人物こそ指導者として相応しい。
⇒学校で勉強の意味として先生に伝えられ、習字で書かされ、その割には出典・意味を知らないまま座右の銘としている方も少なくないのでは?
■過ぎたるは、なお及ばざるが如し:子貢問う、「師と商と孰いずれか賢まされる」。子曰く、「師や過ぎたり。商や及ばず」。曰く、「然らば則ち師愈まされるか」。子曰く、「過ぎたるは、なお及ばざるが如し」。《先進篇》
‥(訳)「子帳と子夏(弟子)とでは、どちらが優れているでしょうか」子貢に尋ねられて、孔子はこう答えた。「子帳は行き過ぎている。子夏は不足している」「では、子帳の方が優れているのですね」「いや、そうではない。行き過ぎも不足も似たようなものだ」
⇒超有名フレーズですね。過不足という言葉をよく使いますが、ここに機縁してバランス感覚の大切さという処世の勘所を訓えてくれたのも孔子※です。
※孔子(紀元前551~479年:73歳没)の本名は丘、字は仲尼。論語は72人の弟子達(Top10傑:約3千人)がまとめた孔子の問答集なので、“子曰く”とは、“子”孔子先生が“曰く”仰ったとなります。
■志学・而立・不惑・天命・耳順:子曰く、吾十有五にして学に志す。三十にして立つ。四十にして惑わず。五十にして天命を知る。六十にして耳順したがう。七十にして心の欲する所に従いて、矩のりを跨こえず。《為政篇》
‥(訳)私は十五歳のとき、学問によって身を立てようと決意した。三十歳で自立の基礎を固めることができた。四十歳になって自分の進む方向に確信が持てるようになった。五十歳で、天命を自覚するに至った。六十歳になって、人の意見に素直に耳を傾けられるようになった。そして、七十歳になると、欲望のままに振る舞っても、ハメを外すようなことは無くなった。
⇒私が孔子を尊敬する理由は、孔子が自身の人生を振り返って素直に一歩ずつ成長する意味を教えてくれる偉大なる凡人、則ち生涯学習の祖だからです。私の場合、田舎育ちゆえに勉強せずスポーツばかりに明け暮れ二浪して大学に入るまでは『志学』は二十前と遅れ、三十半ばで入行した銀行を辞めて脱サラ、四十過ぎて事業は軌道に乗るもサラリーマンとは違って毎年仕事が来るだろうかと思い悩むことが続いたのを振り返ると『而立』『不惑』はいつ達せられたのやら?。五十の天命を強く意識して形から入って研修所・HPを開設、遊業両立※の人生観を定めて還暦六十を前に『耳順』準備に入っております。
※山根敏宏の日本百名山「遊業両立の百名山紀行」サブHP:遊(趣味アウトドア)業(経営コンサルタント)
■朋あり遠方より来たる、楽しからずや:子曰く、学びて時にこれを習う、また説よろこばしからずや。朋あり遠方より来たる、また楽しからずや。人知らずして慍うらみず、また君子ならずや。《学而篇》
‥(訳)習ったことを、折に触れておさらいし、確りと身につけていく。何と喜ばしいことではないか。志を同じくする友が遠路も厭わず訪ねてくる。何と楽しいことではないか。人から認められなくても、そんなことは少しも苦にしない。これこそ本当の君子ではないか。
⇒学習の面白さ、朋友の楽しさ、立派な人間(君子)の在り方について語った名言です。学びの意味を理解せず、友達甲斐の曖昧さに悩み、他己評価を気にする‥昔の自分の至らなさを諭してくれた名文です。「論語」全般を貫くテーマでもあり、次稿以降個々にテーマを設定してコメントしてみたいと思います。