【⑫第12回:逆境下での経営】
コロナ禍でZoom利用等からビジネススタイルも大きく変わりつつありますが、変化はリスクとチャンスの両面を持ち合わせています。現下の環境激変をきっかけに確り下地を固めて、来るべき飛躍を見据えた経営を目指しましょう。
■子曰く、歳寒くして、然る後に松柏の彫しぼむに後るるを知るなり。《泰伯篇》
‥(訳)冬の寒さが厳しくなったときに、はじめて松や柏がいつまでも凋しぼまないでいることが確認できるのである。
⇒目下、想定外のコロナ禍が続いて多くの企業が逆境に晒され、市場からの退出(倒産・廃業)を余儀なくされる会社も少なくありません。こうした自己責任に帰さない経営環境の悪化に対しても、一定の経営体力を保持していれば耐え抜いて生き残っていくことが可能な訳です。普段から逆境に備えた内部留保を蓄積し、財務上での自己資本を充実しておくこと(最低20%~理想50%超)が肝要です。
樹々の世界において常緑の松柏は、新緑や紅葉に彩られる広葉樹と比べて決して派手ではありませんが、寒い冬でも枯れることなく緑の葉をつけ積雪に耐えています。攻守のバランスの取れた経営を貫き、長きに亘る繁栄を目指して貰いたいものです。
■子曰く、人、遠き慮りなければ、必ず近く憂いあり。《衛霊公篇》
‥(訳)遠い先のことまで対策を立ててかからないと、必ず足もとから崩れてしまう。
⇒現代日本語「遠慮」の語源でありながら、全く違う意味合いを感じさせる至言です。これは遠望深慮と表現すればわかり易いと思いますが、目先の“短期”的な問題に捕らわれて右往左往するのではなく、もっと先を見越した“中長期”的な視点を持つことの大切さを訓えてくれます。
ソフトバンクの孫正義会長は永年こうした考え方を貫いてきた経営者として有名ですが、曰く「目の前の波の高さが数メートルに及ぶ大荒れの海でも、目線を水平線の先に置けば目標はブレずに安定している」として、次々と新事業を計画してM&Aにより企業成長を果たしてきた訳です。
経営の世界では、長期=戦略的な“改革”レベルの判断のもとに、短期=戦術的な“改善”レベルの実践活動を積み重ねていくPDCA活動が求められます。因みに、経営判断に際しては、著名な経営書『ビジョナリー・カンパニー』~時代を超える生存の法則(ジム・コリンズ著)~で「Orの抑圧」をはねのけ、「Andの才能」を活かす…という有名なフレーズがある通り、私自身の指導方針として、決して短期か長期かという二者選択の話ではなくて全体最適の視点を忘れず理想を掲げ統合経営を目指すべきとアドバイスさせて頂いております。
※なお、本稿「論語」シリーズを受けて、来月(7月)からは「経営名著」シリーズの復刻にて更に経営を掘り下げてお伝えしたいと考えております。