中小企業診断協会から『活躍されている独立診断士』について取材を受けました

中小企業診断協会からコンサルタントとして独立し…経験豊富な実務経験を持つ診断士の一人に選ばれ、『活躍されている独立診断士の実務について』の取材を受けました。Q&A形式でお答えするうちに、私自身にとっても20年近い歩みが想い出され良い機会になりました。独立間もない診断士、将来独立を考えている診断士さんに参考になれば幸いです。

質問①「コンサルタントとして独立してからの経過年数と独立するまでの経緯や独立前のキャリアなどお聞かせ下さい。」
【年数】来年で脱サラ独立後20年目を迎えます。
【経緯】中小企業融資に係る前職業務において、“過去から現在”までの信用力(業容・財務等)で判断せざるを得ない金融機関のモノの見方に限界を感じる中、“未来”を拓くモノサシを学べる中小企業診断士という資格に魅力を感じるとともに、自分の裁量で活きた企業支援を思う存分行ってみたかったから。
【前キャリア】㈱広島銀行に12年在籍していました。その間、営業店を3ヶ店(大河・尾道・海田)と関連シンクタンクの㈶ひろぎん経済研究所(産業調査・地域開発)への出向を経験しました。
質問②「得意としている業種やコンサルティング分野についてお聞かせ下さい。」
【業種】金融機関出身で基本的にどんな業種の企業にも対応してきたため、特に業種による選別はしていません。但し、未経験業種からのご相談を受ける際には、「業種別貸出審査事典」などの専門図書には必ず目を通し、見方・切り口のベースにすることを心掛けています。
【コンサルティング分野】事業としての成功の早道は自らの“強み”である計数面に特化すべきでしょうし、実際に最初のうちは依頼者側も銀行出身=財務指導という感覚をお持ちのようでした。しかしながら、私の起業動機は業績向上等の好ましい計数結果を導くためのあらゆる方策を考え提案していくことにあったので、敢えて遠回りして各種課題に向き合いながら幅広い領域のコンサルティング能力を身につける多能工の道を歩んでいます。近年ようやく、理想としていた民間企業向けの長期的支援業務のウェイトが高まり、PDCAサイクル全体を通した仕組みづくりなどの仕事を中心に回せるようになってきました。
質問③「質問②の業種や分野が抱えている問題点や課題と、それに対する中小企業診断士としての今後の関わり方などについてお聞かせ下さい。」
【問題点・課題】一般に中小企業は目先の問題への断片的な対処のみで、謂わば“縺れた紐が絡まった”かの如きジレンマに陥っているケースが少なくありません。これは経営資源の脆弱性ゆえに一面では仕方のないことかも知れません。
【診断士の関わり方】中小企業診断士はこうした悪癖を十分理解した上で、中長期の視点に立って根気強く“紐を1本1本解きほぐす”お手伝いをすべきと考えます。そのための十分条件として対象企業がコンサルフィーを支払えるという大前提もありますが、それ以上に我々が必要条件として問題の因果連鎖構造を紐解く洞察力を備えていること、且つ経営者を納得させて動かしていく説得力等々の能力を身につけておくことが不可欠と言えます。その点、診断士は黒子役であり、主役の経営者があたかも自らの才覚で困難を乗り越えたかの如く意識させることにこそコンサルティングの成功があると私は思います。
質問④「診断士としてスキルアップするために普段取り組んでいる事についてお聞かせ下さい。
【スキルアップの取組】中小企業診断士の資格を活かすも殺すも合格後の取組次第と思います。私は資格取得はゴールではなくスタートラインという認識のもとに、理想とする完成像に向かって日々知識の向上を図る毎日です。例えば、独立後暫く(5年程度)は毎年100万円以上かけて研修、視察、本の購読等自分に足りない知識を得るべくスキルアップを図りましたし、今も毎月テーマを持って経営名著や話題書の精読を続けています。
また、現在は民間企業向け長期的指導が中心業務ですが、独立以来ずっと薄謝と言われて敬遠されがちな公共相談等の短期的な案件も依頼があれば断ることなく引き受けています。その理由は、費用対効果からハイパフォーマンスが必須の民間案件と異なり、公共案件は多少のチャレンジが可能な場、即ち新たに培った知識を生身の企業に試し実践できる貴重な場だからです。
質問⑤「コンサルとして独立したばかりの頃の失敗談などお聞かせ下さい。」
【失敗談】昨日までサラリーマンだった自分が突然「先生」と呼ばれます。これで多いのが、自分が偉くなったかのような勘違いと言動に走るという話を多く聞きます。私の場合、大学の恩師から卒業時に「対象に謙虚たれ」との言葉を授かり、人生訓と心得て常に意識するようにしてきたので、そういう失敗はしませんでした。その代わり、どんな方の相談にも真摯に耳を傾ける姿勢が仇となり、ある時怪しい方に「先生」の肩書を利用(=悪用)されかけました。その件は関与先から情報がもたらされ事無きを得ましたが、皆さんも社会的影響力があるという点を考慮して騙されないよう注意してください。
なお、オマケに騙されたと言えば、独立時にお世話になった診断士資格養成校の講師業務で、同校の破綻が目に見えていながら生徒を抱える責任感から無給のまま半年近く業務を続け、結局講師料の未払い債権回収不能という憂き目にも逢いました。売上代金の踏み倒し事案は、後にも先にも唯一本件のみですが…。
質問⑥「独立したばかりの診断士や今後独立をしようとしている診断士の方に向けたアドバイスをお聞かせ下さい。」
【独立アドバイス】独立は多くの方が夢描きながらも、収入面を考えて思いとどまっておられることでしょう。結論から言えば、定年シニア世代以外の中堅若手層の皆さんについては、家族を含めた生活の安定からドロップアウトする覚悟のない方は止めておくべきと思います。私は共働きで独立前にはある程度の貯えがあったので、すんなり大幅収入減からのスタートを許容できる環境でした。ゆえに最初の5年間は売上が右肩上がりで精神的にも楽な気持ちで地歩を固めることが出来ました。それでもやがて頭打ちの段階に差し掛かると、繁閑格差などによる不安定な収入変動に左右されて精神的にも不安な気持ちに苛まれがちです。
そんな時こそ自己陶冶の出番で、自分は「時間の使い方」という概念を大事にして乗り切っています。例えば、更に良い仕事をするための充電期間として新たな深い勉強に取り組んだり、健康増進を図るための身体トレーニングやその延長での長期登山旅行に出掛けたりしています。要は目先の収入に一喜一憂することなく、人生という長いスパンの中で仕事のみならず家庭や趣味も含めたトータルの時間を充実させていくために、飽くなく前を向き上を目指していくことが大切だと思います。
なお、言うまでもないことですが、我々の仕事はサービス業なので常に顧客サイドからの「期待と評価」が関わります。即ち、低品質な仕事をすれば信頼失墜により事業の継続は覚束ないことと心得て、頂く謝金以上の成果を挙げるという考え方を忘れないこと。繰り返しになりますが、独立診断士の仕事はやり甲斐と面白さをストレートに味えるという醍醐味がある反面、不断の努力や非効率極まりない面も否めないので、人生安楽主義から脱却できない方は診断士資格を今の会社での出世や他の組織への転職等に有効活用する道を選択すべきだと思います。

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